乳がん検診Q&A

乳がん検診に関するQ&Aです.
なお,内容は下記の信頼できるサイトも参考にしております.
・日本医師会 http://www.med.or.jp/
・国立がんセンターがん情報サービス https://ganjoho.jp/public/index.html
・日本対がん協会 http://www.jcancer.jp/

<検診を受ける前に>

Q1 血縁(家系)に乳がんはいないので私は大丈夫ですよね?

A1 乳がんには遺伝に関係して罹患する人とそうでない人がいます。遺伝と関係がある人は乳がんの方20名に対して1〜2名程度で、多くの方は遺伝とは関係なく発症しています。そのため家系に乳がんの人がいなくても乳がん検診は大切と考えています。

Q2 血縁(家系)に乳がんはいないのですが、がんになった人は数名います

A2 がんになった人が血縁にいても、遺伝と関係がある場合とそうでない場合があります。がんの遺伝に関する適切な情報を参照するようにしてください。また日本HBOCコンソーシアム(http://hboc.jp/)のサイトもご参照ください。

Q3 乳がん家系かどうかどうすれば分かりますか?

A3 血縁に乳がんの方が多い場合、遺伝性のこともあります。遺伝性乳がんの早期発見のためには特別な検診体制が必要です。例えば家系に2名以上乳がんの方がいる場合など遺伝性乳がんの可能性があります。乳腺専門の医療機関に相談してください。また、日本HBOCコンソーシアムのサイトもご参照ください。

Q4 高齢の私でも乳がんになりますか?

A4 乳がんは30歳台後半から増加し始め、40歳台後半から50歳台でピークになりますが、高齢になっても乳がんは発症します。乳房にしこりなどの自覚症状が出現したら、検診ではなく乳腺専門の医療機関に相談してください。

Q5 乳がんになりやすい人は?

A5 乳がんのリスク因子には以下のようなことがあります。女性ホルモンを上げるような経口避妊薬、閉経後ホルモン補充療法、閉経後の肥満、飲酒、喫煙。遺伝的に乳がんを発症しやすい体質を持っている方もいます。

Q6 症状がある場合はどうすればよいですか?

A6 しこりを触れるなどの自覚症状があるときは、検診の対象外です。速やかに乳腺専門の医療機関に相談してください。


<検診システムについて>

Q7 がん検診にはどのようなものがありますか?

A7 がん検診には大きく分けて市町村が行う「対策型検診(住民検診)」と職場や個人で受ける人間ドックのような「任意型検診」があります。「対策型検診」では科学的根拠に基づき厚生労働省の指針に従った検査が行われます。一方、「任意型検診」では個人のリスクを下げるために検査内容などを選択することもできます。日本対がん協会のサイトをご参照ください。(http://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup/検診について/がん検診の種類)

Q8 乳がん検診は受けた方がいいでしょうか?

A8 乳がん検診の目的は早期発見により死亡率を減らすことが目的です.世界中で研究が行われ、マンモグラフィを定期的に行うことにより、死亡率減少効果が認められました。そのようなことから我が国の厚生労働省は対策型検診としてマンモグラフィ検診を勧めています。超音波検査を加えた検診も期待されており現在研究中です。また、造影剤を用いたMRI検診は乳がんハイリスクの方に考慮した方がよいとも考えられています。

Q9 乳がんの有無を100%診断できるような検査法はないのですか?

A9 どのような優れた検査法でも一長一短があります。100%という検査法はありませんので、定期的な繰り返しの検査をお勧めしています。

Q10 乳がん検診は2年に1回の間隔でいいのですか?

A10 がん検診の目標は死亡率を減少させることです。マンモグラフィ検診での死亡率減少効果は、毎年でも2年に一回でも変わらないという結果があり、レントゲン被曝を減らすために2年に一回とされた経緯があります。

Q11 なぜ乳がん検診の対象は40歳以上なのですか?

A11  マンモグラフィ検診は40歳以上、特に50歳以上では死亡率減少効果があり有効とされています。 20代や30代では死亡率減少効果は認められないと考えられています。そのため「対策型検診」では40歳以上としている自治体が殆どだと思います。

Q12乳がん検診の費用はどれくらいかかりますか?

A12市区町村による住民検診や職場の検診などで自己負担額は異なります。それぞれのがん検診サイトや窓口へお問い合わせください。

Q13 検診をきちんと受けていれば安心ですか?見落としはないですか?

A13 残念ながらどのような検診も人間ドックも完璧なものはありません。検診を受けている人のほうが受けていない人より早めに乳がんが見つかる傾向はありますが、乳がんがあっても検診で見つかりにくいことがあります。また一度検診を受けて異常なしとされても、その後乳がんにならない訳ではありません。そのため定期的な検査をお勧めしています。また、検診で異常なしとされても、しこり触れるなどの自覚症状が出現したら乳腺専門の医療機関に相談してください。


<マンモグラフィについて>

Q14 マンモグラフィ撮影の被ばくで健康への影響はないのですか?

A14 マンモグラフィによる放射線被ばくは主に乳房だけで、白血病の発生などの原因となる骨髄への影響はほとんどありません。1回の撮影で乳房が受ける放射線の量は約0.05ミリシーベルトであり、一般の人が1年間に受ける自然放射線量の50分の1程度です。ただし不必要に撮影を頻繁に受け続けると、それによる乳がんの発生率がわずかに上がることも懸念されています。特に若い方ほど被ばくの影響が高いと考えられています。

Q15 近いうちに胸部レントゲン検査を受けるのですが、マンモグラフィを撮っても大丈夫でしょうか?

A15  マンモグラフィによる乳房が受ける被ばく量は0.05ミリシーベルト、胸部エックス線撮影の被ばく量が0.05ミリシーベルトで、合わせても一般の人が1年間に受ける自然放射線量(2.4ミリシーベルト)の24分の1程度です。マンモグラフィによる健康への影響、並びに両者の間隔が短いことの影響は、ほとんどないと考えてよいでしょう。但し、妊娠の可能性がある方は双方とも対象外になります。

Q16 授乳中でも、乳がん検診は受けられますか?

A16 授乳中であってもマンモグラフィを行うことは可能です。しかし、乳がんの発見率は低くなり、授乳中の検診はお断りしている施設もあります。

Q17 生理中ですがマンモグラフィを受けて大丈夫でしょうか?

A17 検査はいつでも受けることができるので生理中でも可能です。ただし、生理前や生理中は乳房が張っているので、張りがなくなり乳房がやわらかくなる生理終了の3~5日後に行うのが理想的です。ただし、気になる症状がある場合は乳腺専門の医療機関に相談してください。

Q18 不妊治療中ですがマンモグラフィを受けて大丈夫でしょうか?

A18 妊娠の可能性があると被ばくのリスクがありますので、不妊治療をしている担当医にご相談ください。

Q19 豊胸術(シリコン挿入など)をしている場合も検診を受けられますか?

A19 豊胸術後の検査は不可能ではありませんが、検査の精度の低下が指摘されています。多くの検診施設ではお断りしています。乳腺専門の医療機関に相談してください。

Q20 マンモグラフィは痛くてつらいです。できれば受けたくありません。

A20 マンモグラフィは乳房をできるだけ引き延ばして撮影したほうが乳がんを発見しやすくなります。生理のある方は生理前の乳房が張って痛みを生じやすい時期を避けることで痛みを軽減できることもあります。それでも痛みが強くてつらい人は、スタッフにご相談ください。

<超音波検査について>

Q21 超音波の検査があると聞きましたが、市町村のがん検診ではなぜしないのですか?

A21 超音波検査は、現在のところ乳がんの死亡率減少効果について根拠となる報告がないためです。今後、有効性の検証や超音波の機器、やり方や読影の技術の標準化を行い、対策型集団検診における診断基準を確立することが課題となっています。

Q22 超音波検査による乳がん検診は有効ではないのですか?

A22 現時点においては、超音波検査による(対策型)乳がん検診の有効性について、正確な評価を行うためのデータが十分には得られておらず、今後の検討にかかっています。また、現時点では、機器や検査方法・読影技術が均一ではなく、検診における診断基準も統一されていないため、現在、ガイドラインを定めることが検討されています。

Q23 マンモグラフィと超音波検査とどちらがいいですか?

A23 どちらが優れているということはありません。超音波検査による乳がん検診の有効性を示すデータは十分に得られていないため、対策型検診ではマンモグラフィが推奨されています。ただし、乳腺濃度の高い人や若年者には超音波を勧めることがあります。また、1年ごとにマンモグラフィと超音波検査を交互に行う方法なども行われているようです。一般に両方併用することでより乳がん発見率が高くなることがわかっています。

Q24 どういう場合、超音波検査の方がいいですか?

A24 妊娠中や授乳中などエックス線を使用した検査が出来ない場合や乳腺濃度の高い方、若年者、マンモグラフィの圧迫の痛みに耐えられない場合には超音波検査を勧めることがあります。

<視触診について>

Q25 乳がん検診で視触診はしなくても大丈夫ですか?

A25 視触診による乳がん検診は、死亡率減少効果が示されていません。厚生労働省の指針では、視触診のみの乳がん検診では死亡率減少効果が不明であるため,「推奨はしないが、仮に実施する場合は、マンモグラフィと併せて実施すること」とされました。しかし、ご自身で自己触診を定期的に行うことは、病気の早期発見のために重要なことです。(http://www.jcancer.jp/wp-content/
themes/jcancer150430/data/pdf/2013_brest_06.pdf)

Q26 乳房の自己検診は行った方がいいですか?

A26 自己検診を行ったほうが乳がんによる死亡率が減少するというデータはありません。しかし、ご自身の乳房を定期的に確認することで早めに乳がんが見つかることもあります。ご自身の乳房の異常な変化に気づくことはとても大切なことです。しこり触れるなどの自覚症状があるときは、検診ではなく、乳腺専門の医療機関に相談してください。


<要精密検査となった方へ>

Q27 乳がん検診で精密検査が必要と言われました。

A27 要精密検査の方が全て乳がんではありません。要精査とされた人20名中1名くらいの割合です。精密検査には、マンモグラフィの追加撮影や乳房超音波検査、穿刺吸引細胞診や針生検などがあります。正しく診断するため、すみやかな受診をお勧めします。

Q28 乳がん検診を受けると毎回のように要精密検査と出てしまい不安で仕方ありません。

A28 乳がんがなくても、検診で異常があるようにみえてしまうことがあります。検診施設で以前の検診結果と比較することで、繰り返し要精密検査となる可能性は減らせます。しかし現状では比較するための十分な検診体制を作ることは難しい場合が多いようです。そのため、1つの方法としては、以前の画像と比較できる検診施設で定期的に検査をすると繰り返しの要精密検査が減らせます。確認したい場合は各検診施設に”マンモグラフィの比較読影”を行っているか問い合わせてみてください。

Q29 精密検査のためにはどこの病院へ行ったらいいですか?

A29 精密検査は乳腺専門の医療機関を受診してください。対策型検診の場合、二次医療機関のリストが作成されている場合もあります。また、NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構が、施設・機器の精度、診療放射線技師の撮影技術、医師の読影能力に関する認定制度を設けており、ホームページで認定医師、認定技師、認定施設のリストを公開しています。

Q30 精密検査機関でもう一度マンモグラフィを撮られました。どうしてでしょうか?

A30 要精査となった画像をお持ちで無い場合や、診察で医師が判断して追加撮影をすることがあります。異なった方向や拡大撮影などをすることで、より詳しく画像の判定ができます。


<高濃度乳房とは>

Q31 「高濃度乳房」とはどんなことですか?

A31 このサイトの「高濃度乳房って何?」を参照してください。

Q32 どうして「高濃度乳房」かどうか教えてもらえないのですか?

A32  対策型乳がん検診は、国の指針により行っています。高濃度乳房の診断基準がはっきり定まっておらず、また精査医療機関での受け入れ体制が整備されていないことから、関係諸学会・地域医師会では現時点で高濃度乳房を一律に報告するのは時期尚早としています。

Q33 高濃度乳房だと、乳がんになる頻度が高いのでしょうか?

A33 日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインでは、乳がんのリスクが増加することは確実であるとしています。しかし、現時点では高濃度乳房に対して死亡率減少効果が科学的に証明された検診方法はなく、超音波検査など他の検査法を追加導入すればそれで万全という簡単な問題ではありません。検診を定期的に受けることと、月に1度程度の自己触診を行い、今までに認めなかったしこり触れるなどの自覚症状があるときは、次の検診まで待たず速やかに乳腺専門の医療機関に相談する心構えが何より大切と考えます